メニエール病で障害年金はもらえますか?

文責:所長 弁護士 水野高徳

最終更新日:2025年05月01日

1 メニエール病も障害年金受給の可能性があります

 障害年金は、病名に対して、というよりも、発現する障害の状態を評価して受給の可否を認めるものといえます。

 メニエール病についての主な症状は、難聴、耳鳴り、めまい、ふらつき等です。

 審査の対象は、難聴・耳鳴り等については聴覚の障害に該当するか否か、めまい・ふらつき等については平衡機能の障害に該当するか否かで、これらを対象にした審査基準によって判断されることになります。

 また、メニエール病で障害年金を受給するためには、上記の障害状態の他にも、満たしておかなければならない要件があります。

2 メニエール病は初診日の特定が難しい

 障害年金の申請のためには、原則として初診日(申請傷病に関して初めて医療機関を受診した日)が特定されている必要があります。

 ここで、メニエール病のケースについて、例を挙げて考えてみたいと思います。

 発現している症状にもよりますが、メニエール病と診断されるに至るケースとして、頭痛やめまいで長く内科を受診していて、その後、頭痛やめまいだけでなく耳鳴り等も感じるようになったため耳鼻科を受診し、そこで初めてメニエール病と診断された、という治療経過を辿ることがあります。

 このような治療経過の場合、初めて内科を受診した日が初診日となる可能性もあります。

 他方、メニエール病の診断を受ける前に風邪や精神疾患等に伴う頭痛等を主訴として内科を受診していたとすると、この内科受診はメニエール病での初診日にはならない可能性もあります。

 とはいえ、診察した医師が常に正確に判断できるとも限りません。頭痛というだけでは風邪等なのかメニエール病なのかが分からず、後日メニエール病と診断される、ということも生じるということです(だからといって医師による風邪との判断が誤診だったといえるものでもありません。)。

 また、過去の頭痛が風邪等の別の原因によるものなのか、あるいはメニエール病によるものかといったことは、必ずしもカルテ等から明らかになるとも限りません。

 このように、メニエール病については、初診日の特定が難しいことがある点に注意が必要です。

3 認定基準

⑴ 聴力の認定基準

 聴力の認定基準は以下のとおりです。

 1級:両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの

 2級:両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの

 身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの(両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上かつ最良語音明瞭度が30%以下)

 3級:両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの(両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上。又は両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上かつ最良語音明瞭度が50%以下)

 障害手当金:一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの(平均純音聴力レベル値が 80デシベル以上)

 上記の基準から、基本的には両耳とも一定水準を満たしていないと障害年金の受給対象になってこないことが分かります。

 

⑵ 平衡機能の認定基準

 平衡機能の認定基準は以下のとおりです。

 2級:平衡機能に著しい障害を有するもの(閉眼で起立・立位保持が不能又は開眼で直線を歩行中に10メートル以内に転倒あるいは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない程度)

 3級:神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの(閉眼で起立・立位保持が不安定で、開眼で直線を10メートル歩いたとき、多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通す程度)

 障害手当金:神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 上記の基準から、平衡機能の障害のみでは1級の認定基準がないことが分かります。

 また、聴覚のような具体的な検査数値ではなく、立位保持や歩行の可否等で判断されるものであることが分かります。

 

⑶ 聴覚の障害と平衡機能の障害が両方発現している場合

 聴覚の障害と平衡機能の障害が両方発現している場合には、併合認定の取扱いをすることとなります。

 具体的には、例えば聴覚の障害で2級、平衡機能の障害で2級の場合には、2級の障害年金を2倍受給できるのではなく、2つの障害を併合し、全体として1級という認定になります。

PageTop